浮気した者からの離婚請求は絶対に認められないのか4
2015.08.10更新
当ブログにようこそ。
渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。
今回は、
「①夫婦の別居が相当の長期間におよぶ」というけれども相当の長期間とはどれくらい?なのかについて記載いたします。
※前回までの記事
・浮気した者からの離婚請求は絶対に認められないのか①
・浮気した者からの離婚請求は絶対に認められないのか②
・浮気した者からの離婚請求は絶対に認められないのか③
1 10年が1つの指針になりうるけれど、絶対とは言えない
以前お伝えした最高裁判所の昭和62年9月2日判決では、別居期間が36年でした。
もっとも、その後は、それよりも短い期間でも、「相当の長期間」と認めるようになってきました。
とはいえ、10年未満ですと、判断が分かれるケースがあります。
たとえば、同じ最高裁判所の判決でも、8年の別居では「相当の長期間」ではないとしたもの(平成元年3月28日判決)と、8年の別居でも「相当の長期間」としたもの(平成2年11月8日)とがあります。
このため、10年というのが1つの指針になり得るでしょう。
ただし、ここで気をつけていただきたいのは、まず、そもそも「別居が相当の長期間」と評価されるかどうかは、単に別居期間だけを見て決めるのではなく、その別居に至る前の同 居の期間と対比しつつ決めていくことです。
それゆえ当然ですが、ご夫婦の同居期間が長ければ、10年以上別居していても別居が相当の長期間におよんでいないと評価されることがあります。
次に、気をつけていただきたいのは、別居の期間が長くとも、離婚を認めることが妥当かどうかの観点から判断して、離婚が認められない場合があるということです。
これは、あくまで「相当の長期間」とは、浮気した者(有責配偶者といいます。)からの請求を認めて離婚させることが妥当かどうかという観点から要求された条件に過ぎないからです(先の「同居期間が長い」かどうかも、長く連れ添った夫婦を簡単に離婚させることは妥当ではないという判断が働いているとも言えます)。
別居の期間が長くとも離婚が認められなかった例としては、東京で家族と住んでいた夫が福岡で浮気相手と暮らすようになってから約20年間も経過していたけれども、浮気をした夫からの離婚請求を認めなかった東京高等裁判所の平成9年2月20日判決があります。
この事案では、この夫は、この別居の間、月に何度か東京に上京し、その際は東京にある妻の家(夫の旧自宅でもあり、この夫婦の子供が居住する家でもあります)に寝泊まりし、そこでは単身赴任の夫(父)が帰宅したという扱いを受け、さらには新年はその東京の家で過ごし、自身の部下を招く等していたという事案で、このような状況であれば、そもそも夫婦の関係が形骸化しているとは言えないので、離婚が認められないとされました。
2 別居間が8年でも「相当の長期間」とした最高裁判決から読み解く別居期間が短くとも離婚を認められる場合の着眼点(離婚を認めた場合の経済状況、未成熟子の有無、 さらには夫婦の関係修復の可能性等)
先述のように、同じ最高裁判所の判決でも、8年の別居では「相当の長期間」ではないとしたもの(平成元年3月28日判決)と、8年の別居でも「相当の長期間」としたもの(平成2年11月8日)とがあります。
このうち、「相当の長期間」ではないとした平成元年3月28日の最高裁判所の判決では、22年という同居期間との対比から、「相当の長期間」ではないとしました。
他方で、「相当の長期間」であるとした平成2年11月8日の最高裁判所の判決では、同居期間は、上記とほぼ同様の23年でした。
しかし、この最高裁判所の判決は、離婚を拒否している妻が(浮気をした)夫との関係の継続を望むとしながらも別居後5年目に夫の名義の不動産に処分禁止の仮処分をし、他方で夫が不動産(約3億円)を売却し、税金、手数料を差し引いた後に、残額を折半し、不動産に関する債務(9000万円)は夫の取り分から返済するという財産分与案(なお、夫はこれまで別居中の生活費を支払ってきております)をしめしていたことから、離婚を認めました。
このように、「相当の長期」とはあくまで、浮気した者からの請求を認めて離婚させることが妥当かどうかという観点から要求された条件ですので、期間が短くとも、このような離婚を認めることが妥当かどうかの観点から判断して「相当の長期」であると判断されることがあるということです。
この際、上記判例からは、判断要素としては、前回まで述べてきました「これまでの結婚相手の経済的な状況」「未成熟子」の存在、さらには、関係修復の可能性等も考慮されることになるでしょう。
3 次回予告(次回は、これまでのまとめです)
次回は、これまでの「浮気した者からの離婚請求は絶対に認められないのか」についてのまとめを記載いたします。
■記事の続きはこちら
・浮気した者からの離婚請求は絶対に認められないのか⑤
■離婚・男女問題についてのその他関連ブログはこちら
・浮気された者から浮気をした者への離婚請求は絶対に認められるのか
・勝手に別居した相手に生活費を出さない場合、それを理由に離婚が認められてしまうことがあるのか?
・精神病(うつ病、統合失調症、認知症、アルコール中毒等)になってしまった相手と、相手の病気を理由に離婚できるのか?
・性格の不一致を理由に離婚できるのか?
・姑(夫の親族)との関係がうまくいっていないことを理由に離婚できるのか?
・妻や夫に、勝手に離婚届を出されてしまったら?
・養育費にかかる税金(一括でもらう場合、月払いでもらう場合の贈与税)
■相談・問い合わせはこちら■
------------------------------------------------------------
上野訓弘法律事務所
弁護士上野訓弘
℡03-4360-5720|9:00~18:00
東京都渋谷区道玄坂1-12-1
渋谷マークシティW22階101
『渋谷駅』直結
http://www.rikon-uenolaw.jp/
投稿者: