当ブログにようこそ。
渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。
今回は、「離婚した際の財産の分与方法」について記載します。
離婚に際しては、「財産はいらないから(財産はあきらめているから)、とにかく離婚したい」という方も経験上少なくございません。
しかし、離婚後の生活を支えるものは財産ですし、これまで築いてきたものが財産という形になっているのですから、そうした方でも、実際にするしないは別として、少なくとも財産を分けることについてご検討はなさった方がよろしいかと存じます。
また、離婚に際して財産をどのように分けるかを気にされる方も多いかと思います。
そこで、離婚に際して財産を夫婦で分け合うことを財産分与というのですが、
今回は、この財産分与の方法について説明いたします。
第1 全ての財産が財産分与の対象となるわけではない(必ず全ての財産を分け合うものではありません)
まず、夫婦の財産には、①特有財産(夫婦のうちの一方が名実共に所有する財産のことです)、②共有財産(夫婦の共有になる財産)、③実質的共有財産(名義は夫婦の一方のものになっていますが、その実態は夫婦共有のもの)の3種類がございます。
このうち、①特有財産は、原則として、財産分与の対象にはなりません。
例外的な場合もありますが、基本的には、②共有財産、③実質的共有財産が財産分与の対象となります。
第2 (分与の対象外である)①特有財産であると評価される財産の範囲は狭い点にご注意ください
①特有財産である途評価されれば、それは財産分与の対象外とされますが、その①特有財産とはどのような財産のことをいうのかといえば、たとえば遺産がそれにあたります。
ところで、多くの方が誤解されていらっしゃいますが、この①特有財産とされる財産の範囲は、狭いです。
というのも、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は共有財産と推定される(民法762条2項)上に、それぞれの名義の財産であっても婚姻中に得た財産は、多くの場合③実質的共有財産とされてしまうからです。
多くの場合において②実質的共有財産と評価される理由は、夫や妻がそれぞれの名義で得た財産(給料等)であっても、それは夫婦の互いの協力があったおかげで得た財産だから、実質的には共有財産であると裁判において評価されるからです。
このため、①特有財産になるのは、遺産のように、夫婦の協力のおかげで得た財産と評価することが困難な財産だけになるのです。
第3 分与の割合
上記のように、②共有財産(夫婦の共有になる財産)、③実質的共有財産(名義は夫婦の一方のものになっていますが、その実態は夫婦共有のもの)が、原則として財産分与の対象になるのですが、では、分与の割合はどのようになるのでしょうか?
実は、多くの場合、2分の1に分割されます(半分が相手のものになります。)。
離婚をお考えの方の中には、「自分の才覚で築いた財産であり、ここまで財産を大きくしたのは自分の才覚なのだから、相手に分与することはしたくない。」とお考えの方、
あるいは、そのようなことを相手から言われた方もいらっしゃると思います。
しかし、現実には、多くの場合、2分の1に分割されます。
この背景には、夫婦の互いの協力があったおかげで得た財産であり、その互いの貢献の程度は、異なることが明らかではないときは、相等しいものと評価するという考え方があると思われます(参考:平成8年2月の法制審議会による民法改正要綱の答申)。
このため、貢献の程度に違いがあることを立証できない場合(立証は難しい場合が多いです。)、2分の1の割合で分割されるのです。
第4 扶養的要素、慰謝料的要素のある財産分与の場合、上記とは話が違ってきます
これまでの話は、実は、夫婦が婚姻中に互いに協力して得た財産を、離婚に伴い分けること(清算)だけを目的とした財産分与の場合の話です。
しかし、財産分与には、様々な目的(要素)があり、このような清算目的(要素)だけではなく、財産分与により子供の養育費を支払うことをも目的とする場合(扶養的要素)、あるいは慰謝料の支払いをも目的としている場合(慰謝料的要素)があります。
ここで気をつけていただきたいのは、原則として、財産分与には、清算目的があり、扶養的要素、慰謝料的要素は付加的な要素(いわばオプション的要素)に過ぎず、それゆえ、清算目的だけの財産分与が許され、かつ、そのような清算目的だけの財産分与が多いことです。
それゆえ、今からお話しするのは、いわばオプション的要素である扶養的要素、慰謝料的要素が付加されている場合の話です。
上記のように、清算目的(要素)だけの財産分与の場合、対象は原則として②共有財産、③実質的共有財産であり、その分割割合も2分の1でしたが、
扶養目的(扶養的要素)や、慰謝料目的(慰謝料的要素)がある場合、財産分与の対象範囲も限定されませんし、また、割合も当然変わってきます。
ただし、あくまでそれは、扶養目的、慰謝料目的に必要な範囲で変化するものです。それゆえ、無限定には広がりません。
とはいえ、財産分与の際に、扶養(養育費)や、慰謝料を考慮することは、養育費や慰謝料について、分与額等によっては一括払いを可能とする、あるいは今後の養育費等の支払い額を軽減させる(財産分与の際に養育費等を考慮して分与したとしても、その分与の額が低ければ、当然養育費等の支払い義務を免れません。ただし、清算的要素を越えて支払った分については、既払い分として考慮はされます。他方で、十分な額を分与していたのであれば、支払い済みとなります。)等のメリットもございます。
それゆえ、財産分与の際には、養育費や慰謝料としてどれくらいの金額がかかるのか、あるいはどのくらいの金額が請求可能かを検討した上で、財産分与にこうした要素を入れる、入れるとしたらどの程度入れるのか、あるいは全く入れないかについてご検討なさるのもよろしいかと存じます。
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