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渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。
離婚した場合、あるいは離婚も検討しつつ別居中の場合、現に子供を養育している相手に対して、子供の『養育費』を支払う義務が生じえます。
このため、たとえ養育の合意が出来なかったとしても、裁判所に対して調停、審判を申し立てることで誰がどの程度の金額の養育費を支払うべきかが決定されます。
ところで、私立中学、私立高校、私立大学へ子供が進学した場合、
その学費の全額が養育費として認められるのでしょうか?
1 養育費の分担の一般論
まず、一方が全額を負担するということは通常ありません。
原則として、それぞれの収入に応じて分担します。
ただし、収入だけで決めるものではありません。
たとえば、生活状況等も考慮します。
現在、一般には「算定表」と呼ばれる裁判所が作成した表に基づいてに、双方の収入を主要素として分担を決めています。
しかし、上記「算定表」では、公立中学、公立高校までしか考慮されておりません。
すなわち、私立中学、私立高校、私立大学へ子供が進学した場合については、別途考える必要があるのです。
2 私立中学、私立高校、私立大学へ子供が進学した場合の学費は、どのようにして分担させるのか?
(以下は若干専門的な話になります。)
まず、算定表が考慮していないといっても、現在の裁判実務において、算定表を全く使わないと言うことはありません。
算定表を基礎に考えた上で、算定表では考慮していない部分を追加して考えるのです。
具体的には、実際にかかる学費から算定表の考慮している学費(例:15歳以上ですと、年間額33万3844円。判例タイムズ1111号285ページ。)を控除した上で、
その残額をどのように分担させるかを考えます。
分担に際しては、それぞれの収入(収入予想)に応じて案分することが多いです。
3 私立中学、私立高校、私立大学へ行くことに自分が反対していたのに、その意向を無視して相手が子供を私立に進学させてしまった場合にまで、上記の収入に応じた養育の支払いが認められるのか?
父親(母親)の資力、社会的地位等から見て、父親(母親)に、費用負担を認めさせるのが相当であるといえる場合に養育費の負担が認められます。
具体的には、養育費を支払う者の資力、社会的地位(学歴等も含みます)から考えて、自身の子供にそのような高額な費用負担をしてまで私立学校での教育を受けさせることが相当と言える場合であれば、負担が認められます。
このため、たとえ反対していても、資力、社会的地位がある場合には、収入に応じた負担が認められやすくなります。
また、この判断に際してはさまざな要素が考慮されるため、私立学校に行く必要性(公立ではなく私立へ行く理由)や、高校、大学等の義務教育を終えた後の教育機関へ進学する理由も考慮されます。
このため、父親(母親)の学歴(高いほど認められやすくなります。)と共に、その子供にとっての進学理由も大切な要素となります。
なお、反対していたことが全く考慮されないわけではありません。同意のなかったことは、(資力、社会的地位程ではありませんが)考慮要素の1つとなるのです。
それゆえ、上記の場合とは逆に、資力等は乏しいけれど、私立学校等に進学することを、以前は承諾していた(同意していた)という事情がある場合、
こうした同意があったことが重視され、費用負担は認められやすくなります。
(参考審判例)神戸家庭裁判所:平成元年11月14日の審判
「子は親に対し教育を受けさせること、或いはその方法等につき特定の請求をする法律上の権利はこれを有しないと解するのが相当である」とした上で、「本件のように父母が離婚している場合に、親権者である母が未成年者に高等学校、或いは大学等義務教育を越える教育をうけさせることを、費用負担者である父親に相談することなく一方的に決め、その費用を父親に請求することは当然には認められず、ただ、父親の資力、社会的地位等からみて、父親において未成年者のため義務教育を越える教育費を負担することが相当と認められる場合においてのみ、親権者である母はその費用を父親に対し請求し得る」としました。
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