当ブログにようこそ。
渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。
今回は、「子供の親権」について記載します。
離婚をお考えの方で、「自分のことはともかく、離婚した後の子供のことが心配」、
ついては、「自分が親権者になりたい」
でも、「子供の親権者になれるのだろうか?、どうやったら親権者になれるのか?」といった心配をなさっている方もいらっしゃると思います。
今回は、こうしたお悩みのうち、子供の親権者はどのな基準で選ばれるのか(子供の親権者には、父親(夫)と母親(妻)のどちらがなるのか)について、記載します。
1 離婚の際に親権者を決める判断基準
まず、そもそも親権者は話し合いでも決められるので、話し合いで合意できれば、それで親権者は決まります。
当然ながら、ここに基準はありません。
しかし、話し合いで決まらなければ、以下のような基準に沿って、親権者が決められます。
具体的には、
子供の現在にいたるまでの養育状況、子の意思、年齢、性別、兄弟姉妹関係、発育の状況といった子の状況、
並びに、
親の養育能力、養育に掛ける愛情、これまでの実績、今後の継続可能性、心身の健康、居住環境、経済力、さらには養育補助者の存在、その程度といった親の養育状況を
総合的に考慮して決めます。
この際、考慮すべきは、あくまでの子の福祉なので、離婚における有責性は、必ずしも考慮されません
(有責とされた内容が、子の養育にとって支障があるとするかぎりで問題となります。例:DVによる離婚)。
そして、一般に、乳幼児については、母親を優先します。
2 離婚の際、乳幼児について、父親は絶対に親権者になれないのか?
上記のように、乳幼児については、母親が優先されるので、多くの場合、父親は親権者にはなれません。
しかし、全くなれないものではございません。
母親に較べて父親の方が子の養育に適していると判断されるための要素を積み上げ(特に、養育実績が重要です)、
同時に、母親に子の養育に適していないという要素が散見される場合には、乳幼児でも父親が親権者になり得ます。
言い方を変えれば、母親に子の養育に適していないと要素が散見される場合であれば、(父親が養育に適した要素をどれだけ積み上げられるかにもよりますが)、
母親でも、乳幼児の親権者になれない可能性があるということです。
実際、広島高等裁判所の平成19年1月22日判決(事件番号:平成18年(ラ)180号)では、
2~3歳の2人の子供の養育について、
父親、母親双方とも、適性を欠くとまではいえず、
また双方とも2~3歳の2人の子供が安定して生活するに足りる住居や保育所などの環境を整えているとしつつも、
本件は母親が昼間も夜も働いていて保育所に預けることにならざるを得ない事案だったのですが、母親は結婚を巡る事情のために自分の両親(特に父親と)折り合いが悪くなってしまっていたので実家の協力が得られなくなっていたことなどがあり(母親は、その面は友人の助力で補うとは主張していたもののそれでは具体性に欠けると裁判所からは判断されています)、
子供達の監護を全うするのは困難と評価され、人的養育環境において父親に劣るとされ、父親の下で子の養育をするのが適切とされました。
なお、乳幼児には母親が重要という点については、「父親の母(子供達にとっては父方の祖母)によって母性的な監護もなされているのであるから、上記の判断を覆すほどに重視すべきものではない。」旨の判断がされました。
この裁判例については、
「母親が昼夜働かなくてはいけなかったのはなぜなのか」、
「『祖母でも母性的な監護はある』というが、それは母親の監護の欠如を補えるほどのものなのか」等の批判は考え得るところではございますが、
この判断が平成19年とそれほど古いものではないこと、高等裁判所の判断であることから、
離婚の際の親権の帰属問題を考えるにあたり、検討すべき裁判例と思い、今回ご紹介させていだだきました。
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