離婚すると子供と氏(姓)が違うことになる?

当ブログにようこそ。

 

渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

 

今回は、「離婚すると子供と氏(姓)が違うことになってしまう?」という問題について記載いたします。

 

 

1 特に何もしなければ、子供と氏(姓)が違うことになりえます

 

まず、離婚した場合、そのまま何もしなければ子供と氏(姓)が違うことになりえます。

 

というのも、まず、離婚した場合、特別な手続をしない限り、離婚した両親は、それぞれ婚姻前の氏に戻ります。

 

他方で、子供の氏(姓)は、離婚によっても、変わりません。

 

親権者となるのが母親で、その母親が離婚により氏が変わった(旧姓に戻った)としても、特別な手続をしない限り、子供は以前の氏(姓)のままです。

 

女性が婚姻により氏を変え、離婚後は女性が親権者になることが多い現状ですと、特に何もしなれば、親権者になった母親と子供の氏(姓)が違う結果になることが多いです。

 

もちろん、このままでも構わないという方もいらっしゃるでしょう。

 

ただ、「親と氏(姓)が違うことで子供が辛い思いをするかもしれない。」と心配される方が多いのもまた事実です。

 

そうした方の場合、子供と親(親権者)の氏(姓)

子供の氏(姓)か、あなたの氏(姓)を変更する手続をする必要があります。

 

具体的には、①親権者の氏(姓)を婚姻前の氏(旧姓)に戻さず、婚姻中の氏(姓)を続用するか、

 

②子供の氏(姓)を親権者と同じになるように変更します。

 

 

 

 2 ①親権者の氏(姓)を婚姻前の氏(旧姓)に戻さない方法(婚姻中の氏、姓を続用する方法)

 

離婚の日から3か月以内に、本籍地又は所在地(住所地)の市区町村の役場に届出(戸籍法25条1項、4条)をすることで、続用できます(民法767条2項、771条)。

 

離婚届も市区町村役場なので、離婚届と同時にこの婚姻中の氏(姓)の続用の届出をすることも出来ます。

 

一般の場合であれば、氏の変更をする場合には、家庭裁判所の許可が必要で、この許可を得るには氏の変更を必要とする「やむを得ない事由」(戸籍法107条1項)が必要となります。

 

それゆえ、一般の場合であれば、家庭裁判所に氏の変更許可を求める審判を請求し、「やむを得ない事由」があることを主張、立証しなければなりません(家事事件手続法39条、別表第1の122項)。

 

しかし、離婚の日(離婚届提出日)から3か月以内であれば、家庭裁判所の許可も、またそもそも変更を必要とする「やむを得ない事由」も必要とせず、単に、本籍地又はお住まいの市区町村役場に届出をするだけで婚姻中の氏、姓の続用が可能です(つまり、家裁の許可も、「やむを得ない事由」も不要です。)。

 

言い方を変えますと、離婚の日(離婚届提出日)3か月を過ぎてしまいますと、婚姻中の氏、姓を続用したいと思われても、氏の変更を必要とする「やむを得ない事由」と、家庭裁判所の(審判による)許可が必要となるのです。

 

このため、婚姻中の氏、姓を続用されるのであれば、離婚の日(離婚届提出日)から3か月以内に、届出をなさってください

 

ただし、せっかく子供と同じ氏(姓)にしても、戸籍は別々という問題が生じ得ます。

 

この点(どういう場合に戸籍が別々になるのかと、それを是正して一緒の戸籍にする方法)については、「親権者と戸籍の問題(親権者にはなったけれども子供と戸籍が違う?)」で記載いたしております。

 

 

3 ②子供の氏(姓)が親権者のそれと同じになるように変更する方法

 

子供の氏(姓)を親権者のそれと同じになるように変更したい場合、変更につき家庭裁判所の許可を得た上で、本籍地又は所在地の市区町村役場に届出をすることが必要(民法791条1項、戸籍法25条1項、4条)となります。

 

このため、まずは、家庭裁判所に対して、子供の氏(姓)を変更することの許可を得るために審判を申し立てる必要があります(家事事件手続法39条、別表第1の60項)。

 

ただし、この「許可」については、先に述べました一般の氏(姓)の変更許可の場合とは違い、氏の変更を必要とする「やむを得ない事由」までは必要とされていません(民法791条1項)。

 

このため、親権者の氏(姓)と子供の氏(姓)とを同じにすることが、子供の福祉にかなうかどうかという観点から許可すべきかどうかを緩やかに判断します。

 

 

 

ところで、この審判の申立ですが、子供が15歳以上の時は子供自身で、

 

子供が15歳未満の時は、法定代理人(親権者)が申立をします(791条1項、3項)。

 

弁護士に委託される場合であれば、子供の氏(姓)の変更を許可すべき事情(事由)の主張、立証と共にこうした申立人の名義の処理についても適切に対処しますが、ご本人でなさる場合には、こうした細かい点についてもご留意ください。

 

そして、家庭裁判所の許可を得た後、本籍地又は所在地の市区町村役場に届出をすることで子供の氏(姓)の変更は完成です。

 

家庭裁判所の許可を得ても、入籍届出をしなければ変更の効果は生じないので、入籍の届出を忘れないでください

 

入籍届けの具体的方法については、、「親権者と戸籍の問題(親権者にはなったけれども子供と戸籍が違う?)」の「3 具体的方法」をご参考ください。

 

 

 

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