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渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。
今回は、「精神病(うつ病、統合失調症、アルツハイマー型等の各種の認知症、薬物中毒、アルコール中毒等)になってしまった相手と、相手の精神の病気を理由に離婚できるのか?」についてのまとめを記載いたします。
■前回までの記事はこちら
・「うつ病」や「統合失調症」になった相手と病気を理由に離婚はできる?①
・「うつ病」や「統合失調症」になった相手と病気を理由に離婚はできる?②
1 離婚を検討される際には、まずは相手方の親族の方と話し合ってみてください
強度の精神病になった場合は、裁判上の離婚が認められる可能性があります。
しかし、そもそも、結婚相手が強度の精神病になった場合、離婚については、主に結婚相手の親族と話し合いをすることにより、協議離婚という形で離婚に至る場合が多いとされております。
このため、まずは、相手方の親族の方と、離婚について話し合ってみてください。
2 強度の精神病で、回復の見込みがない場合は、離婚原因となります(民法770条1項4号)
さて、ご親族との話し合いがうまくいかない場合に、裁判で離婚が出来るのかという問題となりますが、回復の見込みのない強度の精神病は、法が定める離婚原因ですので、離婚が出来る可能性があります。
ここで、気をつけていただきたいのは、離婚が出来る離婚原因となるには、「①強度の精神病」であること及び「②回復の見込みがないこと」の両方が必要であることです。
通院しながらであれば日常生活が軽度の支障で過ごせるような場合であれば、「強度の精神病」には該当しません。
アルコール中毒、薬物中毒の場合には、「回復の見込みがない」にはあたりません。
また、強度のうつ病等の場合であっても、現在の治療技術の発達に伴い、「回復の見込み」は『ある』と評価されると考えられます。
3 「強度の精神病で、回復の見込みがない場合」にはあたらなくとも、「その他婚姻を継続しがたい」場合として離婚が認められることがあります
たとえば、相手方に(精神病の影響によるものであるかどうかはともかく)暴力等の粗暴な言動が見られる場合です。
あるいは、相手方の生活状況(これには相手方の行動能力、稼働能力等を含みます。)によっては、やはり、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとされることもありえます。
このため、上記のアルコール中毒、薬物中毒の場合や、軽度の精神病、回復の見込みがないとは言えない精神病の場合でも、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」がある場合として離婚が認められることがあります。
ここまでの記載に関して詳細が気になった方は、
「うつ病」や「統合失調症」になった相手と病気を理由に離婚はできる?①をご覧ください。
4 ただし、上記のような事情があるだけでは離婚できません。
①精神病にかかった夫や妻(結婚相手)の治療、介護のために、ある程度の期間誠意を尽くして努力していたことと、
②離婚後に、相手(元夫や元妻)が治療や生活に困らないような具体的な対策(計画)の用意
の2つが必要です。
このうち、②離婚後に、相手(元夫や元妻)が治療や生活に困らないような具体的な対策(計画)の用意とは、
たとえば、(元夫や元妻の資産状況にもよりますが)将来にわたっても、元夫や元妻の治療、生活費について支援する、あるいは、治療、生活費に困らないような財産分与の計画です。
この「元夫や元妻の治療、生活費について支援する、あるいは、治療、生活費に困らないような財産分与の計画」は、経済的な面で難しいという方もいらっしゃると思います。
しかし、その場合でも、生活保護により元妻や元夫が、生活、治療を続けられるようにして、かつ、できる限り病院に面会に行って精神的な擁護も続けることを誠意を持って表明していれば、離婚は認められます。
現に、このような場合に、東京高等裁判所の昭和58年 1月18日の判決(事件番号:昭57年(ネ)235号)は、離婚を認めています。
ただし、精神的な擁護を続けるという点も重要なことは、忘れないでください。
精神病に関して「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとされる場合でも、上記のような事情は必要です。
ただし、 あまりに身勝手すぎる相手に対しては、例外的に②が不要とされる場合があります
もっとも、これは、介護が必要になった事情や、介護における対応について同情の余地が全くないような相当身勝手な相手の場合に限られます。
ここまでの記載に関して詳細が気になった方は、
「うつ病」や「統合失調症」になった相手と病気を理由に離婚はできる?①
「うつ病」や「統合失調症」になった相手と病気を理由に離婚はできる?②
をご覧ください。
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